花言葉に込めて・・・



 ネコ娘が人間界でのバイトを終え、灯篭を潜り抜けると
前を行くロクロの姿が目に入った。

「ロクちゃん!」

「あっ!ネコちゃん!」

振り返ったロクロは満面の笑みを湛え、胸には真赤なチューリップの花束が抱えられている。

−−−そう言えば、今日は鷲尾さんとデートだったっけ・・・−−−

ネコ娘は、昨夜ロクロが嬉しそうに言っていたのを思い出した。

「鷲尾さんからのプレゼントでしょ?!いいなぁ〜!ロクちゃんは素敵な彼がいて・・・」

頬を染め微笑むロクロの表情は幸せそうで、友達として嬉しい半面、
同じ女としてほんの少し嫉妬してしまう。

赤いチューリップの花言葉は「愛の告白」
彼は花束に自分の気持ちを込めて彼女に贈ったのだ。

ネコ娘の薄紅色の唇から吐息がひとつ零れ落ちていった・・・

妖怪アパートの前でロクロと別れ、ネコ娘は自分の家のある森へと足を進めた。
こんなモヤモヤした気持ちのままゲゲゲハウスに行ったら
きっと鬼太郎に当たってしまうのがオチだからだ。

薄暗い森を暫く歩くと小さな家と、その前に座る鬼太郎の姿が
ネコ娘の瞳に映る。

「鬼太郎!どうしたの?」

「森の奥で珍しい花が咲いてるのを見つけたんだ。
 ネコ娘も見たいだろうと思って・・・」

鬼太郎はネコ娘の手をとり、どんどん森の奥へと入って行く。

「昼間、父さんに頼まれて木通(アケビ)を採りに行ったんだ。
 茎が生薬になるからね。そうしたら・・・ほらっ!」

木通の木々が一斉に紫色の花を咲かせる中、一本の木通だけが真白な花を咲かせている。

「きれ〜い!!紫のシャワーの中で白い花が輝いてる」

「秋になったら木通の実を一緒に採りに来よう」

「約束にゃ!」

ネコ娘が差し出した小指に、鬼太郎は微笑みながら己の小指を絡めた。

「そろそろ帰ろうか。・・・父さんが・・・父さんがネコ娘の煮物が食べたいって待ってるよ」

「うん!」



二人並んでの帰り道。

「チューリップの花束はないけど・・・」

「えっ?何?鬱金香(チューリップ)がどうかしたのかい?」

「んにゃ!なんでもないにゃ!」

自分も幸せなのだとネコ娘の胸がじんわり温かくなった。

因みに・・・木通の花言葉は「唯一の恋」___鬼太郎がそれを知ってたのかどうかは・・・


【完】



秋津様のサイト『鬼灯』が30000hitされたそうで、おめでとうございます!!
期間限定SSを頂いて参りました(*´▽`*)
チューリップの花束・・・あこがれちゃいます!いいなあ、ロクちゃんvv羨ましい♪
爽やかなSS、ありがとうございました。






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